福岡地方裁判所 平成6年(ワ)1578号 判決 1999年12月16日
原告 A野太郎
<他1名>
右両名訴訟代理人弁護士 大神周一
同 大谷辰雄
同 安部尚志
同 宇治野みさゑ
同 用澤義則
同 原田直子
同 古屋勇一
同 古屋令枝
同 平田広志
同 山本一行
同 美奈川成章
同 矢野正剛
同 石渡一史
同 浦田秀徳
同 三溝直喜
美奈川成章訴訟復代理人弁護士 甲能新児
被告 世界基督教統一神霊協会
右代表者代表役員 大塚克己
右訴訟代理人弁護士 和島登志雄
被告 株式会社ハッピーワールド
右代表者代表取締役 小柳定夫
右訴訟代理人弁護士 八代宏
主文
一 被告らは、連帯して、原告A野太郎に対し、金四六四万三二〇〇円及びこれに対する昭和六三年一〇月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、連帯して、原告B山花子に対し、金一二五万五七六〇円及びこれに対する昭和六三年一〇月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、これを二〇分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。
五 この判決は、仮に執行することができる。
事実
第一請求
一 被告らは、連帯して、原告A野太郎に対し、四七七万一二七二円及びこれに対する昭和六三年一〇月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、連帯して、原告B山花子に対し、一二七万七四六九円及びこれに対する昭和六三年一〇月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 原告A野太郎(以下「原告A野」という。)の物品購入
原告A野は、愛興から、昭和六〇年一一月二九日、多宝塔一個を六〇〇万円で購入し、昭和六一年三月三〇日、釈迦塔一個を四四〇万円で購入し、その数日後、人参液二五本を二〇〇万円で購入し、いずれもその代金を支払った。その事情は、次のとおりである。
原告A野の四女は、生来眼に障害を有していたところ、昭和六〇年一一月二九日、被告世界基督教統一神霊協会(以下「被告統一教会」という。)の信者である新開チヅ子(以下「新開」という。現姓は「小田部」)は、原告A野に対し、先祖の因縁を霊能師に見てもらうように勧め、原告A野夫婦を北九州市内のマンショシの一室に案内した。被告統一教会の信者である霊能師の女性は、原告A野夫婦に対し、「武士であった先祖が目の見えない町人を斬ったので、その因縁が子に来ている。多宝塔を買ってお祈りをすることによって因縁により苦しんでいる先祖の霊が救われます。このままだと嫁に行っている長女か二女のどちらかに目の見えない子が生まれます。」などと述べて、午後六時ころから午後一一時ころまで購入の決断を迫り、原告A野に多宝塔購入を決意させ、同原告は代金を支払った。
原告A野夫婦は、新開の勧めにより被告統一教会のビデオセンターに通うようになったところ、昭和六一年三月三〇日、被告統一教会の信者である石津利枝から、悪い因縁を消すために釈迦塔を購入するように勧められ、孫のことなどが不安になった原告A野は、やむなく購入を承諾し、代金を支払った。
その数日後、原告A野は、別の女性信者から、「体を清めなさい。因縁を流しなさい。血が汚れている。」などと言われて、人参液購入を勧められ、恐怖のあまりこれを承諾し、代金を支払った。
なお、原告A野は、退職金残金と娘名義の預金を各代金支払に当てたものである。
2 原告B山花子(以下「原告B山」という。)の物品購入
原告B山は、有限会社興南商会から、昭和五九年五月三〇日、印鑑三本を二四万円で購入し、同年六月ころ、壺一個を二五〇万円、人参茶七本を五六万円で購入して、いずれもその代金を支払い、昭和六〇年一月二九日、多宝塔購入を申し込み、その申込金として二万円を支払った。その事情は、次のとおりである。
原告B山は、夫が入院した日の翌日である昭和五九年五月三〇日、知人の被告統一教会信者清松照子(以下「清松」という。)に誘われて、久留米市内の集合住宅の一室で他の女性信者から姓名判断を受け、印鑑を作成して運勢を変えるよう勧められた。将来に不安のあった原告B山は、作成を決意し、信者である有馬賀代子(以下「有馬」という。)に代金を支払った。
その数日後、原告B山は、清松に誘われて福岡市まで女性の「先生」の話を聞きに行った。「先生」は、「ご主人が病気になったのは、先祖に色情魔がいたからです。因縁を断ち切るために壺を授かりなさい。そうすれば、ご主人の病気もよくなりますよ。」と申し向けて壺の購入を勧めた。原告B山は、その言葉を信じて壺を購入した。
その後しばらくして、原告B山は、清松に連れられて「先生」に会いに行き、「あなたの血は、先祖の因縁で汚れている。人参茶を飲めば必ず良くなる。」と言われ、夫とやはり入院中の母の病気が必ず治るという言葉を信じて、人参茶を購入した。
昭和六〇年一月二九日朝、原告は、清松と有馬に久留米市内の料亭に連れて行かれ、そこで「先生」から「子供達に不幸が及ぶ。」と繰り返し言われ、多宝塔の購入を勧められた。原告B山は、子供達が不幸にならないようにと思い、六〇〇万円の多宝塔の購入を決意し、申込金二万円を支払った。しかし、原告B山は、帰宅してから迷いが生じ、結局断った。
3 被告統一教会の責任
(一) 民法七〇九条
被告統一教会は、資金集めのために霊感商法を企画し、組織をあげてこれを指示、実行、統括した。被告統一教会信者による原告A野及び原告B山に対する違法な各販売行為は、被告統一教会の法人としての不法行為である。
(二) 民法七一五条
被告統一教会の指揮監督下にある信者らは、その資金獲得という被告統一教会の事業の執行に付き、原告A野及び原告B山に対する違法な各販売行為をしたものであるから、被告統一教会は使用者責任を負う。
4 被告株式会社ハッピーワールド(以下「被告ハッピーワールド」という。)の責任
(一) 民法七〇九条、七一九条
被告ハッピーワールドは、被告統一教会の資金集めのために、同被告により、商品の販売組織、集金組織、人員の供給組織構築を目的として設立された会社である。したがって、被告ハッピーワールドは、被告統一教会と主観的かつ客観的に共同して原告A野及び原告B山に対する違法な各販売行為をしたものであるから、共同不法行為責任を負う。
(二) 民法七一五条
原告A野及び原告B山に対する違法な各販売行為をした信者らは、被告ハッピーワールドないしその傘下の販売組織である各販売特約店に所属する販売員であったり、あるいは各販売特約店の名で販売活動に参加していたものであるから、実質的に被告ハッピーワールドの被用者の地位にあり、その指揮監督に服していた者である。よって、被告ハッピーワールドは使用者責任を負う。
(三) 民法四四条
被告ハッピーワールドの代表者である古田元男及び小柳定夫は、被告統一教会の信者らを指揮して霊感商法を展開し、その一環として原告A野及び原告B山に対する違法な各販売行為をさせたものであるから、被告ハッピーワールドの職務を行うに付き不法行為をなしたものである。
5 原告らの損害
(一) 原告A野
(1) 財産上の損害 三九四万三二〇〇円
同原告が支出した金員合計一二四〇万円から和解により受領した八四五万六八〇〇円を差し引いた金額
(2) 慰謝料 三九万四三二〇円
(3) 弁護士費用 四三万三七五二円
(二) 原告B山
(1) 財産上の損害 一〇五万五七六〇円
同原告が支出した金員合計三三二万円から和解により受領した二二六万四二四〇円を差し引いた金額
(2) 慰謝料 一〇万五五七六円
(3) 弁護士費用 一一万六一三三円
6 よって、原告A野は、被告らに対し、不法行為による損害賠償四七七万一二七二円及びこれに対する不法行為の後である昭和六三年一〇月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うよう求め、原告B山は、被告らに対し、不法行為による損害賠償一二七万七四六九円及びこれに対する不法行為の後である昭和六三年一〇月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
二 請求原因に対する認否
1 被告統一教会
(一) 請求原因1及び2の事実は、知らない。
(二) 同3及び5の事実は、否認する。
2 被告ハッピーワールド
(一) 請求原因1及び2の事実のうち、原告らが代金を支払った事実は知らない。その余の事実は、否認する。
(二) 同4及び5の事実は、否認する。被告ハッピーワールドは、印鑑の販売はしていない。
三 抗弁(被告ハッピーワールド)
1 消滅時効
(一) 原告らは、霊感商法に関する報道が大々的になされた昭和六三年末には、被告ハッピーワールドに対し損害賠償請求訴訟を提起することが可能であった。
(二) 昭和六三年末から三年が経過した。
(三) 被告ハッピーワールドは、平成七年四月二七日の第五回口頭弁論期日において、右消滅時効を援用するとの意思表示をした。
2 過失相殺
(一) 原告A野は、常に夫婦で相談しており、かつ代金の大部分の支払は翌日又は翌々日であって再考の時間があったにもかかわらず、非科学的で荒唐無稽な話を安易に信じて物品を購入したのであるから、五割以上の過失相殺がされるべきである。
(二) 原告B山は、購入を断ることが十分に可能であったのに、非科学的で荒唐無稽な話を安易に信じて物品を購入したのであるから、五割以上の過失相殺がされるべきである。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1の(一)は否認する。消滅時効の起算点は、原告らが、霊感商法被害救済に乗り出した弁護士に相談し、説明を受け、訴訟提起が可能な程の確かな知識を得た時点であり、原告A野については平成四年一月二〇日、原告B山については同月三〇日である。
2 抗弁2は否認する。
第三証拠《省略》
理由
一 《証拠省略》によれば、請求原因1の事実が認められ、《証拠省略》によれば、同2の事実が認められる。《証拠省略》には、右認定に反する部分があるが、採用しない。
二 請求原因3及び4(被告らの責任)について判断する。
1 物品販売の実態
《証拠省略》によると、次の事実を認めることができる。
(一) 被告統一教会の信者らは、昭和三九年六月、伝道活動の費用を確保するために幸世物産株式会社を設立し、同社は昭和四四年に社名が統一産業株式会社に変更された。その後、競争会社を設立して競わせることが良いのではないかとの意見が強まり、昭和四六年五月、被告ハッピーワールドが幸世(しあわせ)商事株式会社(以下「幸世商事」という。)の名で設立された。なお、同社の社名は、昭和五三年三月に世界のしあわせと、更に同年一一月にハッピーワールドと変更された。
幸世商事の販売地域は、昭和四八年の八月から九月にかけて全国を三分割した地域に分けられ、それぞれの地域に販売会社が設立された。その後も、販売の拡大に伴い、各販売地域が更に分割されて新たな販売会社が設立された。独立の法人格を有する販売会社であっても、それらは実質的には幸世商事の傘下にある企業であった。幸世商事及びその傘下の販売会社の取扱い商品は、基本的に幸世商事が韓国から輸入する大理石壺や高麗人参茶等であったが、別の経路で販売会社が仕入れた印鑑等も販売されていた。被告統一教会の信者の一部は、共同生活を営みながら、外交員として上記物品の販売活動に従事していた。
(二) 昭和五七年八月、営業販売活動と伝道活動をともに行う地区グループの全国的統括組織として、全国しあわせサークル連絡協議会(以下「連絡協議会」という。)が発足した。連絡協議会においては、販売会社の販売地域が、ブロックないし地区組織として活動単位になったが、右活動単位の名称及び範囲が被告統一教会の当時の活動単位と同一であったために、被告統一教会の一般信者は、連絡協議会が独立した組織であるとの認識を欠いており、その名称自体も信者にあまり知られていなかった。
(三) 昭和五九年から昭和六一年にかけての被告ハッピーワールド傘下の販売会社の九州地区における活動は、次のようなものであった。
世界のしあわせ九州(その後東亜商事と名前を変更)が卸元となり、各地区にその代理店として販売会社があり、代理店に数人の外交員(委託販売員)が立てられ、委託販売形式をとっていた。品物は、販売担当信者の共同生活場所に納入され、集金された代金も右場所に集められ、会計担当者が受領していた。
代理店は、帳簿上、販売代金の一部を販売手数料として外交員に支払ったことになっているが、実際は右手数料は支払われず、代理店に留保されて、後日被告統一教会の活動に費消された。また、特定の外交員の手数料が過大になった場合は、税務上の問題発生を免れるために、外交員を異動させる等していた。販売会社と外交員の間に介在する販売会社を新たに設立することもあった。
また、外交員は、販売の度に代理店の名前を使い分けており、外交員の所属代理店が領収書ごとに異なったり、実際に担当していない外交員の氏名があたかも担当していたかのごとく領収書に記載されることもあった。
販売会社の社員との関係では、帳簿上は従業員一人当たり給料、賞与等三〇〇万円ないし八〇〇万円を支払ったようになっていたが、実際は、本人には月四万二〇〇〇円、年間五〇万円位を交付するだけであり、差額は被告統一教会の活動に費消されていた。
(四) 被告ハッピーワールドは、昭和六二年三月三一日限りで大理石壺や多宝塔の輸入を停止した。
2 販売行為の違法性
前記事実によれば、被告統一教会の信者による原告A野及び原告B山に対する物品販売は、伝道活動の費用や同被告本部への納入金等を獲得するための実質的な献金勧誘行為であるということができる。そして、特定の宗教団体の信者が、宗教活動の一環として、これに付随して、実質的には献金勧誘行為である物品販売を行うことは、その方法、態様及び金額等が社会的に相当なものである限りは、違法ということはできない。しかしながら、右行為が、宗教活動に藉口して専ら利益獲得を目的とし、勧誘された者の不安を増大させたり困惑を引き起こすような態様で行われ、社会的地位や資産等に照らして分不相応な多額の金員を支出させるなど、社会通念上相当と認められる範囲を著しく逸脱するものである場合には、右行為は違法となるというべきである。
これを本件について見るに、原告A野に対し物品購入を勧誘した被告統一教会信者らは、原告A野の娘の眼に障害があるのは先祖の非道な行為の因縁であると決め付け、更に将来身内に障害者が生まれるなどと述べて、原告A野を不安に陥れることにより、それぞれが数百万円という高額な物品の購入を承諾させたものであり、その代金には、老後に備えるべき退職金の一部が当てられたものである。また、原告B山に対し物品購入を勧誘した被告統一教会信者らは、夫が入院したばかりで不安を抱えている原告B山に対し、夫の病気は先祖の悪性格の因縁であると決め付け、更に子供にも不幸が及ぶなどと述べて、同原告をして、因縁を断ち切るためには壺等を購入し、人参茶を飲んで血をきれいにするしかないと困惑させて、物品の購入を承諾させたものである。右各行為は、いずれも社会通念上相当と認められる範囲を著しく逸脱する勧誘行為であり、違法であるというべきである。そして、各原告に対し物品購入を勧誘した被告統一教会信者らには、右違法行為を行うにつき故意があったということができる。
3 被告統一教会の使用者責任
各原告に対し不法行為を行った被告統一教会の信者らは、右不法行為当時連絡協議会に所属していることになっていたこと、連絡協議会自体が営業活動とともに宗教活動を行う集団の組織であったこと、右組織の実態は被告統一教会の地方組織と混同しかねないものであり、信者の中には両者を分別して認識していない者もあったことは、既に認定したところである。右事実によれば、被告統一教会は、連絡協議会の活動状況を把握し、これに影響を及ぼすことができる立場にあり、信者らの行為についても、違法な行為がなされないように指揮、監督のできる立場にあったものということができる。
そして、前記不法行為が外観上宗教的活動の一環としてなされたことは、その態様、特に使用された文言に照らし明白であるから、右行為は、外形的に被告統一教会の事業の執行につきなされたものということができる。
したがって、同被告は、その信者らの行った不法行為の使用者責任を負うべきものである。
4 被告ハッピーワールドの使用者責任
原告A野や同B山に対し違法な物品販売を行った被告統一教会の信者が帰属していた販売会社は、形式的には独立の法人格を有するものであっても、実質的には被告ハッピーワールドの傘下にあり、その影響力を受けていたことは既に認定したところである。すなわち、販売会社への委託は、販売手数料を増やす等の目的での形式だけのもので、実質は同被告の直営店であったと言っても過言ではない。したがって、同被告は、輸入して販売を委託した物品についてはもちろんのこと、自らが輸入したのではない印鑑についても、その指揮監督下にある外交員が物品の販売活動の執行につき行った不法行為の使用者責任を負うべきものである。
三 請求原因5(損害)について判断する。
1 原告A野
(一) 財産上の損害
同原告の主張どおり、支出した金員から和解により受領した金員(弁論の全趣旨により認められる。)を差し引いた金額である三九四万三二〇〇円となる。
(二) 慰謝料
三〇万円が相当である。
(三) 弁護士費用
四〇万円が相当である。
2 原告B山
(一) 財産上の損害
同原告の主張どおり、支出した金員から和解により受領した金員(弁論の全趣旨により認められる。)を差し引いた金額である一〇五万五七六〇円となる。
(二) 慰謝料
一〇万円が相当である。
(三) 弁護士費用
一〇万円が相当である。
四 被告ハッピーワールドの抗弁について判断する。
1 消滅時効について
使用者責任において民法七二四条の加害者を知るとは、被害者が、使用者並びに使用者と不法行為者との間に使用関係がある事実に加えて、一般人が当該不法行為が使用者の事業の執行につきなされたものであると判断するに足りる事実をも認識することをいうと解される。
本件については、《証拠省略》によれば、原告A野は平成四年一月二〇日に、原告B山は同月三〇日に、いずれもいわゆる霊感商法により被害を受けたとして、原告ら訴訟代理人に本件訴訟を委任することとなったこと、被告ハッピーワールドと不法行為の実行者である外交員らとの間には複数の販売会社が介在しており、原告らにとって、弁護士への右委任までは、同被告と外交員らとの間に使用関係があるのか、原告らへの不法行為が同被告の事業の執行につきなされたものであるのかについての判断は非常に困難であったことを認めることができる。そうすると、同被告に対する損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、右委任の時点であったというのが相当である。したがって、被告ハッピーワールドの消滅時効の抗弁は理由がない。
2 過失相殺
前記のとおり、原告A野に対する不法行為は、同原告の家族に障害者がいることに藉口した違法性の程度が高いものであり、原告B山に対する不法行為は、同原告の夫の入院直後にことさら同原告の不安をあおるという悪質なものであるから、いずれの原告についても、過失相殺の事由はないか、仮にあったとしても過失相殺は相当でない。
五 以上によれば、原告A野の請求は、被告らに対し、四六四万三二〇〇円及びこれに対する昭和六三年一〇月七日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、右範囲でこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、原告B山の請求は、被告らに対し、一二五万五七六〇円及びこれに対する右同日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、右範囲でこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 古賀寛 裁判官 石原寿記 秋本昌彦)